父が長男の嫁に遺言書を書くとき

 相続や遺言をテーマに出張講座でお話をするとき、以下をよくテーマにします。

「長男に嫁いだところ、長男が両親よりも、早くに亡くなった。その後、長男の嫁は、献身的に長男の両親をお世話をしたが、父が亡くなった。」
 上図の場合、父の法定相続人は、誰でしょうか。長男の嫁を除く全員です。長男の嫁は長男を代襲相続できません。もし、長男夫婦に子供がいれば、その子供は、長男を代襲して父の相続人になれます。
 なお、子供のいない夫婦の相続に関しては遺言書があればなぁをご参照ください。長男の嫁は、長男の両親のお世話を一生懸命しましたが、いざ、相続となれば、蚊帳の外です。何らの財産も相続できません。長男の嫁であっても、養子縁組でもしてない限り、相続人ではありません。
 しかし、先に父が亡くなり、遺産分割協議をしないまま、後に長男が亡くなった場合には、父の相続人であった長男の相続人として、嫁は遺産分割協議に参加できます。数次相続というものです。
 つまり、

A) 先) 長男死亡
   後) 父死亡
   の場合、長男の嫁は、父の遺産分割協議に参加できませんが、

B) 先) 父死亡
   後) 長男死亡
   の場合で、父の遺産分割協議をしない間に、長男が亡くなった場合、
   長男の嫁は、父の遺産分割協議に参加できます。

 順番が違うだけなのに、雲泥の差です。

 A)の場合、父が、長男の嫁に財産を残そうと思ったら、遺言書を書くか、長男の嫁を養子にする必要があります。
 

金沢市畝田中四丁目1番地11 
山田達也司法書士事務所
  電話 076-268-5360
 

○番○号は遺言書に注意! 

住所が、○番地で終わる方と、○番○号で終わる方がいます。○番地は、土地を基準にした住所の表し方です。一方、○番○号は、住居表示といって、建物を基準とした住所の表し方です。ちなみに当事務所の所在地は前者です。
 住居表示は、住所を特定できますが、不動産を特定できません。
 遺言書で、不動産を特定したい場合は、最低限、以下のように書きます。

金沢市○○町一丁目1番の土地」
金沢市○○町一丁目1番地 家屋番号1番の建物」

 地番や家屋番号等は、権利証、登記識別情報及び、固定資産税納付通知書等にも書いてあります。遺言書に書くときは、これらの書類を元に、最新の登記事項証明書を取得して、間違いのないように書いて下さい。間違いにより、不動産を特定できない場合は、登記できないこともあり得ます。
 遺言書は生前、何度でも書き直せます。当たり前ですが、死後は書き直せません。ぜひ、お間違いなく。

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山田達也司法書士事務所
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遺言書があればなぁ

 相続業務の中で、「遺言書があればなぁ」と思う時があります。たとえば以下の事案のときです。


 子供のいない夫婦で、夫(妻)が亡くなった場合です。夫(妻)の両親がすでに他界されている場合、相続人は夫(妻)の兄弟姉妹です。残された妻(夫)は、配偶者を亡くした失意の中、夫(妻)の兄弟姉妹と、遺産分割協議をしなければなりません。遺産分割協議書に、判子(実印)を押してくれればいいですが、すんなり押してくれない場合もあります。こういうケースでは、多くの場合、兄弟姉妹にとっては「判子を押す=権利を放棄する」となるからです。
 このとき、ご注意いただきたいのは、遺産分割協議書に相続財産を放棄すると書いてあっても、相続債務は、法定相続人全員が負うことになります。借金等の相続債務をも放棄するには、家庭裁判所相続放棄申述受理の申立てというのが必要です。
 妻(夫)と兄弟姉妹が相続人の場合、兄弟姉妹の法定相続分は4分の1です。何人いても、遺産すべての4分の1です。兄弟姉妹が2人いる場合は、8分の1ずつです。遺産の総額が800万円の場合、100万円が兄弟姉妹1人の相続分です。もし、あなたが、100万円を取得する権利があるが、いらないと言ってほしいと頼まれたら、どうでしょうか。いらないと即答できる人は、少ないのではないでしょうか。また、遺産がすべて現金なら、まだ良いのですが、不動産しかない場合、売却が必要になったりと面倒です。遺産が自宅しかない場合は、分割そのものが困難になります。

 これらの問題も、以下のような遺言書があれば解決します。


 簡単ですよね。実際に書いてみてわかったのですが、これを書くのに1分と要しませんでした。
 ただし、このような自筆証書遺言は、相続開始後、検認という手続きが必要になります。検認とは相続人立会いの中で、検認の日における遺言書の内容や形状等を明確にする手続きです。このときに、他の相続人に、遺言書の内容が知られます。それを避けたい場合は、公正証書遺言を利用すると良いでしょう。検認手続きが不要になります。
 また、以下のような封印のある遺言書は、家庭裁判所で、相続人らの立会いがないと、開封してはいけません。


 ちなみに、自筆証書遺言において、遺言者の住所は法定要件ではありませんが、遺言者を特定するため、書いた方がいいでしょう。
 その他、ご注意いただきたい点がありますので、実際に遺言書を書く場合には、専門家に、ご相談されながら書くことを強くおすすめします。
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はじめまして

 司法書士山田達也と申します。
 平成17年に金沢市の畝田に開業いたしました。日々の雑感をつづっていきます。
その中に、皆様に有用な記事が一つでも書ければと思います。

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