遺言書があればなぁ

 相続業務の中で、「遺言書があればなぁ」と思う時があります。たとえば以下の事案のときです。


 子供のいない夫婦で、夫(妻)が亡くなった場合です。夫(妻)の両親がすでに他界されている場合、相続人は夫(妻)の兄弟姉妹です。残された妻(夫)は、配偶者を亡くした失意の中、夫(妻)の兄弟姉妹と、遺産分割協議をしなければなりません。遺産分割協議書に、判子(実印)を押してくれればいいですが、すんなり押してくれない場合もあります。こういうケースでは、多くの場合、兄弟姉妹にとっては「判子を押す=権利を放棄する」となるからです。
 このとき、ご注意いただきたいのは、遺産分割協議書に相続財産を放棄すると書いてあっても、相続債務は、法定相続人全員が負うことになります。借金等の相続債務をも放棄するには、家庭裁判所相続放棄申述受理の申立てというのが必要です。
 妻(夫)と兄弟姉妹が相続人の場合、兄弟姉妹の法定相続分は4分の1です。何人いても、遺産すべての4分の1です。兄弟姉妹が2人いる場合は、8分の1ずつです。遺産の総額が800万円の場合、100万円が兄弟姉妹1人の相続分です。もし、あなたが、100万円を取得する権利があるが、いらないと言ってほしいと頼まれたら、どうでしょうか。いらないと即答できる人は、少ないのではないでしょうか。また、遺産がすべて現金なら、まだ良いのですが、不動産しかない場合、売却が必要になったりと面倒です。遺産が自宅しかない場合は、分割そのものが困難になります。

 これらの問題も、以下のような遺言書があれば解決します。


 簡単ですよね。実際に書いてみてわかったのですが、これを書くのに1分と要しませんでした。
 ただし、このような自筆証書遺言は、相続開始後、検認という手続きが必要になります。検認とは相続人立会いの中で、検認の日における遺言書の内容や形状等を明確にする手続きです。このときに、他の相続人に、遺言書の内容が知られます。それを避けたい場合は、公正証書遺言を利用すると良いでしょう。検認手続きが不要になります。
 また、以下のような封印のある遺言書は、家庭裁判所で、相続人らの立会いがないと、開封してはいけません。


 ちなみに、自筆証書遺言において、遺言者の住所は法定要件ではありませんが、遺言者を特定するため、書いた方がいいでしょう。
 その他、ご注意いただきたい点がありますので、実際に遺言書を書く場合には、専門家に、ご相談されながら書くことを強くおすすめします。
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