附言事項に愛を込めて


 遺言には、 法律効果が生じる事項が限定されています。それら以外は 書いても法律効果を生じません。この遺言に書いてあるけど法律効果が生じない事項を、附言事項といいます。では、なぜ、法律効果が生じないのに書くのでしょうか。
 理由は人それぞれです。例えば、なぜ、このような遺言を書くに至ったのか理由を書いてもいいでしょう。「生前、長男には経済的援助を沢山したが、次男には、ほとんど出来なかった。親としては、心残りだ。」などです。
 ただし、気をつけないといけないのは、それでかえって相続人間の争いを引き起こしてしまっては、残された相続人は、大変です。
 とはいえ、遺言は多くの場合、その方の最後の重大な意思表示となります。ですので、「どうしても、これだけは相続人らに伝えたい。わかってほしい。そうでなければ、死んでも死にきれない。」という場合は、附言事項に書くと、多くの相続人にそれらを伝えることができます。特に、封印された自筆証書遺言ですと、裁判所で検認手続きが必要ですので、原則、相続人全員の面前で開封します。その結果、多くの相続人に自分の気持ちを伝えることができます。どんな内容であっても、です。
 ただし、あまりに支離滅裂な内容ですと、遺言書を作成した時点の意志能力を疑われますので、注意が必要です。また、解釈によっては、遺言内容と矛盾するような内容ですと、その遺言内容が無効となる恐れがありますので、これも、注意が必要です。
 附言事項には、法律効果はありませんが、ときに、残された相続人への心理的効果は、計り知れないものがあります。理想を言えば、附言事項には、家族への愛や、感謝の言葉があると、残された家族は救われます。ただし、心からそういう気持ちがあれば、ですが。

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